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デジタル遺言導入の背景
従来の遺言は主に、
①自筆証書遺言(遺言の全文等を自署し、署名・押印する遺言)
②秘密証書遺言(遺言内容は秘密にして作成・封印する遺言)
③公正証書遺言(遺言の内容を公証人に伝えて公正証書で作成する遺言)
の方式で作成されていました。
これまで、自筆証書遺言は手書きの負担が重く、公正証書遺言は公証役場へ出向く手間がかかる等、遺言の普及には課題がありました。
しかし、高齢化に伴い、遺言の重要性が高まる中、デジタル技術の進展を受けて「デジタル遺言」の活用が検討されることとなりました。
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公正証書遺言のオンライン作成(2025年10月開始)
従来は、公正証書遺言を作成するためには、公証人との対面・書面での手続きが必要で、デジタル化に対応していませんでした。
原則として、
①本人が公証役場に出向いて作成を嘱託し、②公証人が対面で本人に遺言の意思確認等を行い、③公正証書原本を書面で作成・保管、④本人に公正証書正本・謄本を交付する手続きにより行われました。
それが、2025年10月1日から公正証書のオンライン作成が開始されたことにより、リモートでの手続きが可能となりました。
オンライン作成の主な特徴は、
①公証役場に出向くことなく、インターネットを利用して電子署名を付した申請が可能となり、
②公証人が相当と認めた場合は対面ではなくウェブ会議を通じて本人の意思確認等を行うことが出来、
③公正証書は電子データとして作成・保存され、署名も電子署名で行われ、
④公正証書の正本についても電子データでの受領が可能となった事
等です。
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自筆証書遺言のデジタル化の検討
自筆証書遺言を作成するには、「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自署し、これに印を押さなければならない」(民法968条1項)とされており、自署がない場合は原則として無効となります
(ただし令和2年7月から財産目録については手書きが不要となりました)
また、現行の自筆証書遺言は基本的に遺言者自身が保管する場合が多く、偽造や紛失のリスクを伴いました。
これに対し、デジタル遺言では録画・録音や、遺言者以外の者を関与させない技術的措置、公的機関による確認等の仕組みが検討されており、遺言の偽造・変造のリスクを大幅に軽減させることができます。
さらに公的機関による保管も検討されているため、紛失のリスクも大幅に軽減することが期待されています。
現在、自筆証書遺言のデジタル化は、法改正の検討段階にあります(「民法(遺言関係)等の改正に関する中間試案」令和7年7月15日)。
自筆証書遺言のデジタル化にあたっては、遺言の本文を電磁的記録(パソコン、スマ-トフォン等)で作成し、全文等の朗読を録音・録画して記録する方式(甲案)、遺言の本文を電磁的記録又はプリントアウトした書面により作成し、公的機関で保管する方式(乙案)等が検討されているところです。
自筆証書遺言のデジタル化については、現在も法制審議会等で議論が続いており、詳細は確定していませんが、アメリカ等の海外事例を参考に協議が進められており、デジタル遺言の実現に向けた法整備が進んでいます。





